受給者までもが拒否する無責任な年金政治
[韓国日報・朝を開きながら・2022年10月6日]
ユン・ソンミョン 韓国保健社会研究院 研究委員・元韓国年金学会長
基礎年金に関心が集中している。最近、経済協力開発機構(OECD)が、投入費用に対する高齢者貧困緩和効果が少ない我々の基礎年金を修正して運用するように勧告したからだ。支給対象者を減らし、脆弱な高齢者にさらに支給することで、高い高齢者貧困率を下げられるように運用せよとした。
勧告案のインクが乾く前に、政府・与党と野党の双方が基礎年金額の引き上げに言及している。年金額を引き上げる各論では、政府・与党と野党案に大きな差がある。政府・与党は高齢者の70%に今より多く支給すると言う。一方で野党は、すべての高齢者に今より多く支給すると言う。
なぜこのようなことが起きるのか。加入者が負担する保険料で運営される制度ではないからだ。月給から直接差し引かれる金ではないため、また、さらに引き上げると恩を売るのに都合の良い制度運営方式であるため、このように荒唐無稽なことが起きている。
前回の大統領選候補TV討論では、我々の政治史において意味のある場面があった。年金改革に合意しようというアン・チョルス候補の提案に、尹錫悦・李在明・シム・サンジョン候補が皆快く同意したからだ。当時、容易な合意に疑問を抱いた。「あの難しい年金改革をあのように簡単に合意するのか」と思ったからだ。このような懸念が現実となって現れるまで1年もかからなかった。行うと言っていた年金改革は放置し、若い世代の骨の髄までしゃぶる基礎年金をさらに支給すると言ったからだ。高齢者の70%からすべての高齢者へ拡大すると言ったからでもある。
統計庁の家計金融福祉調査によれば、65歳以上の高齢者のなかでも少なくない高齢者が若年層よりずっと裕福に暮らしている。それなのに、なぜすべての高齢者に基礎年金を支給しようとするのか。我々よりはるかに多くの税金と保険料を徴収している福祉先進国でさえ、制度の維持が困難で諦めた制度をだ。高齢者の票をさらに得ようという魂胆だろう。政治的目的達成のための買票手段として国民の血税を使おうとしているのだ。
このような政界の振る舞いと対照的な筆者の最近の経験を紹介したい。90歳を目前にしたキム・イルチョン元福祉部局長の叫びだ。「ユン博士。このままだと国が滅びます。スウェーデンの普遍的福祉は、個人に不足している分だけを補う方式です。我々は全員にn分の1で等しく分けることを普遍的福祉だと誤解しています」。政府政策に反対して3回も追い出されたという元官僚の苦言である。
大韓退職者協会(KARP)のチュ・ミョンリョン代表がメッセージを送ってきた。「ユン博士。昨日、協会で基礎年金の討論会を開催したのですが、予想に反して65歳以上の高齢者全員に基礎年金を支給することに大多数が反対しました」。代わりに「市場で自力で職を得ることが困難な高齢者には公共型雇用を提供し、働く能力がある大多数の高齢者には市場型雇用で働く機会を与えてほしい」とのことだ。「人生100年時代において、すべての高齢者に基礎年金を支給するのではなく、最低限の生活が可能な給付を支給する市場型雇用を作ることに政界が心を砕いてほしい」ということである。
我々が年金を学んできた日本の基礎年金は、自身で保険料を納めていなければ受け取れない。日本の高齢者の70%程度は、定年前の給与の30~50%水準を受け取りながら、定年退職後も再雇用され65歳を過ぎても働いている。世界で最も速く高齢人口が増えている我々の社会において、若い世代の骨の髄までしゃぶる基礎年金の拡大ではなく、高齢者向けの市場型雇用が活性化されるよう、労使を説得することに政治的力量を集中すべきではないか。国を思うという政治家たちの振る舞いが、情けないにもほどがあるため言う言葉である。
出典:韓国日報(原文を見る)
