限界嶺を越えながら
[ソウル新聞・開かれた世界・2014年11月17日]
ユン・ソンミョン 韓国保健社会研究院 研究委員・高麗大学経済学科兼任教授
江原道の山奥で生まれた筆者が、ソウルに初めて来た日に越えた峠が珍富嶺だ。車一台がやっとすれ違える曲がりくねった狭い砂利道だったため、速い直行バスでさえ時速40kmを超えられなかった。ソウルに一度来たこと自体が大きな自慢だった時代に、ソウルへ行く道はまさに「漢陽千里」そのものだった。ソウルに行く機会もなかったし、道が険しく「麦の峠(飢饉の時期)」と同じくらい越えるのが容易ではなかったからだ。40年以上が過ぎた今、ソウルから東海岸へ行く道は多様になった。
ユン・ソンミョン 韓国保健社会研究院 研究委員
東海へ向かういくつかの分かれ道の中で、昔の時代に行き来した珍富嶺のように感じられる峠道が限界嶺だ。「台風ルサ」がもたらした被害の復旧で道路状態は以前よりかなり改善されたとはいえ、今でも運転するには険しい道が限界嶺である。10歳の子供の手を引いてソウルへ向かった両親、今は80歳を超えたその両親に会うため、ソウル側から反対方向に限界嶺を越えていく。
仕事を探して都市に人口が集まっていた時代、食べ物が不足していたため、政府が積極的に産児制限に乗り出した。「二人だけ産んでも三千里は超満員」というスローガンで産児制限に成功した。1990年代初めまで、政府政策の中で最も成功したのが産児制限政策であると自慢までしていた。その成功したはずの政策が国家的な災厄へと変貌した。世界的に類を見ないほど20年間にわたって超低出生(出生率が1.3以下)の状態に置かれたため、その間に800万人も少なく生まれた。将来の経済活動人口がそれだけ減少したということだ。
今後、出生率が上がったとしても、失われた20年を取り戻すことはできないという点に問題の深刻さがある。深刻さを認識した政府が積極的に乗り出しているが、力不足である。「第2次低出生高齢社会基本計画」(2011~2015)を立て、5年間で70兆ウォン(低出生対策40兆ウォン、高齢化対策30兆ウォン)を投入しているが、低出生・高齢者貧困問題が解決される気配がない。今後も出生率が上がる可能性が小さいためだ。生涯独身のままでいる人口が多いほど、出生率が上がる可能性も小さくなる。
人口学的に女性の可妊期が終わる45歳まで結婚しない場合、「生涯独身人口」に分類される。韓国保健社会研究院の研究によれば、現在20代前半の男女5人に1人(20歳男性の23.8%、20歳女性の18.9%)は、20年後に「生涯独身」のままでいるという。このように独身者の割合が高まりながら、1人世帯も急増している。すでに全世帯の25%に達する453万世帯(2012年基準)が1人世帯だ。1人世帯が増加し、一人で死を迎える孤独死も増加している。
各分野で福祉への欲求が噴出する状況において、これを担う社会の根幹が崩れているのである。容易に上がりそうにない出生率に効果的に対応する道は、将来に急増する支出要因を先制的に減らしていくことだ。かつての「麦の峠」を越えるためにベルトを締めた時代を、再び思い出すべき時が来たのである。
限界嶺を越えながら、澄んだ空気と落葉の香りを嗅ぎつつも、複雑な心境だった理由だ。そのままにしておけば国家的な災厄となる低出生・人口高齢化、独身人口と1人世帯の急増に伴う約350万人の孤独死予備軍問題などを、これ以上政府だけに任せていてはいけないと思う。社会の各分野が乗り出して、我々の社会環境の変化がもたらす各種リスクについて積極的に知らせるべき時が来たようだ。
20年もの間、超低出生国家の状態に置かれている我々にとって、「他の選択肢がなくベルトを締め直すしかない状況」であるという事実を、ありのままに伝えるべき時が来たのである。実情を正しく知らせてこそ、我々の社会がどれほど危険な段階に進入しているのかを肌で感じることができるだろう。
我々の社会が耐えなければならない総体的な負担の大きさと、対策立案の緊急性が共有されなければならない。正しく共有さえされれば、目下論争の大きい公務員年金改革など、我々の社会が直面している様々な難題に対する生産的な議論が可能になるだろう。過去のパラダイムに囚われ、消耗的な論争だけを繰り返す我々の社会の現実を見ていると、心苦しくてのことだ。かつて越えるのが困難だった珍富嶺や限界嶺と同じくらい険しい前途が、すでに我々の前に来ているという現実を、早く、そして広く、正しく知らせなければならない。
出典:ソウル新聞(原文を見る)
