ブラックスワン国家のスモールボール・ゲーム
[ソウル新聞・開かれた世界・2013年8月15日]
ユン・ソンミョン 韓国保健社会研究院 年金研究センター長
エアコンの切れた研究室で、息が詰まるほど蒸し暑い夏を過ごしている。大きな苦痛をもたらす電力不足は需要予測の誤りであり、発電所をいくつか急いで建てれば解決できると考えがちだ。火力発電は電気代が高く、単価の安い原子力は国民の反発で建設が容易ではない。火力発電で電気代が上がれば、余裕のない庶民生活と企業競争力の弱体化への懸念が大きくなるだろう。
このようにジレンマに陥らせる問題が至る所で発生しそうだ。電力不足は、適切に対処できなければさらにこじれる複雑な問題の序幕である。対国民的な広報および中間層の定義に問題があったとはいえ、景気後退による税収不足と福祉需要を満たすための微細な税制調整に対して猛烈に反発する我々の現実が、もどかしく見える理由だ。
黒い白鳥を意味する「ブラックスワン」(Black Swan)は、発生可能性がないように見えるが、ひとたび発生すれば大きな波及効果をもたらす出来事を指す。白鳥は白いと信じていたヨーロッパ人がオーストラリアで黒い白鳥を発見して以来、「不可能と思われたことが起こること」を指す表現として使われている。筆者には、我が国はブラックスワンの国家であるように思われる。ソニーを抜いたサムスン、トヨタを追う現代車、20世紀以降に4000万人以上の人口を持つ国家の中で、先進国の門戸に入った唯一の国家だからである。
明るい面があれば暗い面もあるものだ。50年で平均寿命は20年以上延び、高かった出生率は世界最低水準まで落ち込んだ。成功した政府政策であった産児制限が国家的な災厄となって久しい。高齢者人口が3倍(7%→20%)に増加するのにフランスは154年かかったが、我々は26年程度と見込まれている。先進国の目に、また別のブラックスワンが韓国に現れている。
福祉欲求の充足および所得の二極化解決のための福祉財源確保問題も、始まりに過ぎない。人口高齢化により今後支出が急増する基礎年金、健康保険、国民年金と公務員年金などの財源確保に、早くも頭を悩ませているからだ。国民の大部分が福祉拡大を叫ぶが、財源確保に対する共通の認識の形成は困難な実情である。このように状況が急変する中で、野球で言えばスモールボール(small ball)ゲームを通じた問題解決が可能だろうか。人口高齢化のような満塁ホームラン数本による大量失点の危機を、過去のデータと認識に依存する伝統的なスモールボールゲームで切り抜けることができるだろうか。そうではないと考える。スモールボールとは、ホームランや長打を打てる特定の選手で勝負する野球であるビッグボール(big ball)に対応する概念で、選手全体がバント・盗塁・進塁打などの組織力で勝負する野球を指す。
スモールボールゲームが悪いということではなく、スモールボールゲームの土台である各種データが、生産年齢人口の減少、潜在成長率の低下、福祉需要の急増などにより、適時に国民に適切に反映されにくいからである。個人の創造性、すなわち野球で言えばビッグボールに代表される才能ある選手たちの個人技に依存して活路を見出しつつ、チームワークを十分に発揮して社会統合を達成するスモールボールも併せて駆使する統合野球、すなわちトータルベースボールが必要な時点であると信じる背景だ。
問題解決が難しいからといって問題を伏せておくのではなく、一日も早く公論化しようとする努力が必要だ。最初は冷ややかであっても、適切に理由を説明すれば、思ったよりも簡単に共感するのが我々の国民である。我々が何かに挑戦して失敗した状況でも、最低限の生活は国家が責任を持とうとするのが福祉であり、このような福祉制度を運営するためには今よりも少し負担を増やす必要があることを冷静に説明すれば、陣痛はあるにせよ、少なくない国民が同意することになるだろう。
緻密な社会安全網があってこそ、リスクを冒した挑戦によって創造性が発揮され得る。挑戦精神と創造性で武装した才能ある選手たちが現れてこそ、文字通りの統合野球が可能になるだろう。猛暑の真っ只中で経験する電力不足は、暑い夏を越す国民と我が国の将来にとって良い経験になり得る。「危機を機会に変えて不可能を可能」にしてきた我々のブラックスワンの事例が再び必要な時だ。
出典:ソウル新聞(原文を見る)
