一度にすべてを叶えることはできない「トゥルヌリ」事業
[韓国日報・2012年11月26日]
ユン・ソンミョン 韓国保健社会研究院 研究委員
低所得労働者の雇用保険と国民年金保険料の一部を支援する「トゥルヌリ社会保険」支援事業が導入されて5カ月目を迎えようとしている。今年だけで2600億ウォンが費やされる事業であるため、早くも事業効果に対する問題が提起されている。社会保険の死角地帯解消という当初意図した政策効果から、低所得の自営業者やその他の脆弱階層への未支援問題、健康保険が含まれない理由に至るまで、問題提起の範囲も広範だ。このような論争がある状況で、「トゥルヌリ」事業をどのような尺度で評価することが客観的であり得るだろうか。
低成長と雇用なき成長、高い若年失業率、非正規職の増加、低所得職種の量産および所得の二極化の深化、低出生・高齢化に伴う経済活力の鈍化および高齢者扶養負担の増加、これらの問題による世代別、階層間の葛藤の高まりなど、現在だけでなくこれから訪れる社会は、今よりも憂鬱な展望で満ちている。
このような状況において、自らの力で現在と将来を準備する誘因を提供し、低出生・高齢社会における将来世代の負担を軽減できる政策が優先的に推進されなければならない。すなわち、現実に対する不満や希望のなさが引き起こす社会葛藤を最小限に抑えるメカニズムとして機能し得る政策が必要な時点なのである。
こうした要求事項に対して肯定的な効果を期待できる政策の一つが、低所得層に保険料を支援する「トゥルヌリ社会保険」支援事業である。雇用主と低所得労働者の社会保険負担を軽減しながら、低所得労働者の失職と老後の不安解消に寄与できるからだ。
たとえ短期間に意図した通りに事業成果が現れなかったとしても、日に日に深刻化する所得の二極化解消の観点から、低所得層の所得を支援する効果がある。社会保険の死角地帯解消効果が少なく、政策の死荷重(Deadweight Loss)が懸念されるという指摘については、懸命に働く人に保険料を支援するという側面において、「無条件な福祉拡大」よりも優れた政策代替案となるだろう。
このような制度導入の目的と時宜性を認めたとしても、「トゥルヌリ社会保険」支援事業が短期間に定着することを困難にする障害要因も少なくない。
不十分な所得把握インフラによる適切な対象者把握の困難さ、制度への理解不足に起因する政策有効性の低下が代表的な例だ。このような懸念にもかかわらず、我が国の社会保険の発展過程を見れば、「トゥルヌリ社会保険」支援事業の成功の見通しは暗くない。保険料を払っても国民年金を受け取れないという誤った信念から、わずか10年余り前まで「国民年金は馬鹿だけが加入する制度だ」という認識が蔓延していた国こそが我々だったからだ。最近、見違えるほど変わった国民年金に関する認識の変化が、長期的な観点から「トゥルヌリ社会保険」支援事業を楽観的に見ることができる背景となっている。
「トゥルヌリ社会保険」支援事業を成功裏に定着させるためには、事業主と労働者の制度に対する認識改善、事業主の行政負担の緩和、公平性の観点から低所得の自営業者やその他の低所得労働者への制度の拡大適用が必要だと思われる。
特に所得把握インフラの不備による副作用が最大の難関となり得る。しかし、未来志向的な観点から見れば、これも大きく懸念することではないと思う。所得把握に関連する問題の相当部分が、我が国の社会の先進化問題と結びついているからだ。各分野で先進化が効果的に進行すれば、提起される問題は自動的に解決されるだろう。また、そうしてこそ初めて真の意味での先進社会および公平な社会の構築も可能になるはずだ。
最善の政策が存在することは容易ではない。しかし、最善が難しいのであれば、次善、次々善の政策に向けた絶え間ない努力が必要だと考える。一度にすべてを叶えられる制度は稀だ。事業推進の目的が明確である以上、我々全員の知恵を絞り、「トゥルヌリ社会保険」支援事業の副作用を最小限に抑える方策づくりに没頭すべき時である。
出典:韓国日報(原文を見る)
