本文へスキップ
年金研究会

国民年金の収益率向上、口で言うのは簡単だが

2023.08.03

[韓国日報・朝を開きながら・2023年8月3日]

ユン・ソンミョン 韓国保健社会研究院 研究委員・元韓国年金学会長

1998年の国民年金法改正で導入された財政推計制度は、2003年から5年周期で国民年金の長期的な健全状態を点検し、それに相応しい対策を講じることに目的がある。筆者は2003年の第1次から2023年の第5次に至るまで、5回にわたって国民年金財政計算委員会に参加した。そのため、時期によって財政計算委員会が重点を置く部分も変化してきていることを実感している。

2003年に初めて施行した第1次財政推計は、紆余曲折も多かったが、最も熱意を持って運営された財政計算委員会(当時の名称では国民年金発展委員会)だったと思う。財政推計を初めて施行したため、どうすれば適切に行えるかについて外国の事例も熱心に検討した。公式な委員会を構成して超長期にわたる財政推計を初めて実施したため、委員会の緊張感はかなり高かった。利害関係団体を代表する委員や専門家だけでなく、政府省庁間の神経戦もあった。

国民年金発展委員会傘下の制度発展専門委員会の幹事委員を務めていた筆者は、たった一日で政府省庁から50本近い電話を受けたことがあった。幹事委員が中立を保っていないようだという政府省庁側の立場からだった。そして、特定の争点について政府省庁が自分たちの立場が適切に反映されていないと判断したためであった。このような問題提起は、財政安定を重視する省庁と、財政安定とともに老後所得保障の適切性も併せて考慮すべきとする省庁との視点の差に起因していた。

このように少なくない論争の末、2003年の第1次国民年金財政推計では財政評価期間を70年と設定し、「財政評価期間末の積立倍率2倍を財政安定指標として設定」した。この内容が意味するのは、財政評価期間である70年後、すなわち2003年から70年後の2073年末になっても、その時点から2年間、言い換えれば2075年においても1年分、年金として支給する金を確保していなければ、国民年金が財政安定状態を維持しているとは見なせないということである。

当時、幹事委員として「80年」の財政評価期間を好んでいた筆者の立場を支持する委員がほとんどいなかったため、結局妥協案として70年が我々の国民年金の財政評価期間として設定された。筆者は2008年の第2次財政計算委員会から2018年の第4次財政計算委員会に至るまで、財政評価期間の延長を主張してきた。当初は80年への10年の期間延長を主張し、2018年の第4次財政推計の際には100年へと評価期間をさらに30年延長すべきだと主張したが、推計期間は依然として70年のままである。我々が年金を学んだ日本は100年の推計期間を採用しており、100年後の積立倍率1倍、すなわち2123年になっても1年分、年金を支給する金を確保している。2055年に基金が枯渇する我々と大きく対比される点である。この20年間で平均寿命が大幅に伸びたにもかかわらず、財政評価期間の延長はなかった。平均寿命が延びれば年金を受給する期間が延びることになり、財政評価期間の延長も不可避である。

状況がこのようであるにもかかわらず、2018年の第4次財政計算委員会では、財政評価期間を70年から40年短縮し、30年の期間についてのみ評価しようという荒唐無稽な財政安定化策が登場した。第4次財政推計では、2057年に国民年金基金が枯渇することが示された。財政評価期間を従来の70年から30年に短縮すれば、2018年に30年を加えた2048年は国民年金基金が枯渇する前であるため、強力な財政安定措置は必要ないという主張をするためであった。小細工と呼ぶのも気恥ずかしい案が、2018年の第4次国民年金財政計算委員会において、しかも第一の財政安定策として提案された。後になってみればあまりに荒唐無稽な提案であったことが容易に分かるが、当時の政治状況では、このように呆れた財政安定策が遠慮なく提示され得たのである。

過去4回の財政推計を呼び起こす理由は、第5次国民年金財政推計の過程においても、2018年の小細工による財政安定策への既視感を抱かせるような、理解しがたいことが起きているからである。文在寅政権の5年間、年金改革を行わなかったため、同水準の財政安定を達成するためには保険料を1.8%ポイントはさらに引き上げなければならない。尹錫悦政権においても適切な財政安定化措置を講じなければ、5年前よりも悪化した諸要因により、2%ポイント以上の追加引き上げ要因が発生し得る。要約すれば、尹錫悦政権でも適切な財政安定措置がなされない場合には、わずか10年で、その10年前の国民年金で予想していた同水準の財政安定を達成するために、4%ポイント程度の保険料を追加で引き上げなければならないということだ。9%である国民年金保険料率を、過去25年間でたった1%ポイントも上げられなかった点を想起すれば、大きな負担となる数値だと言える。

状況がこのようであるにもかかわらず、国民年金財政計算委員会と国会年金改革特別委員会では、財政安定策について十分な議論が行われていない。多くの主題を同時に扱っているため、議論する時間が大きく制約されているにもかかわらず、財政安定策の策定そのものに集中するよりも、付随的な主題により多くの時間を割いているからである。基金運用をうまく行い収益率を高めれば、今年3月に発表された第5次財政推計の財政安定達成に必要な保険料率よりも、保険料率を低く抑えつつ財政安定の達成が可能だという主張が勢いを増し、こうした主張を裏付ける議論により多くの時間を割いているためである。

国民年金基金の運用収益率を高めるべきだという主張に反対する専門家はいない。問題は、基金運用収益率の向上は我々の努力も重要だが、外部的な要因によってより大きく左右され得るという点である。受給開始年齢の引き上げや保険料の引き上げのように、実行に移すことは困難であっても、一度導入に成功すれば確実な財政安定効果をもたらす政策手段とは異なり、基金運用収益率の向上は我々のコントロール外にある外生変数だからである。期待収益率を高めるために、いかに基金資産のポートフォリオをうまく構成したとしても、外部環境の変化により、当初の予測値とは異なる結果が現れる可能性が高いためである。

全国民の老後に責任を負わなければならない国民年金を、このような「予測の誤り」のリスクに過度にさらしてはならない。たとえ確率的には90%以上の達成が可能だとしても、万が一、予想外の周辺環境の変化により「予測の誤り」が大きくなった場合には、収拾する方法がないからである。すでに改革の「ゴールデンタイム」を逃した我々の国民年金が、持続可能性確保のために数少ない苦痛を伴う政策手段を採用しようとする努力の代わりに、基金収益率の向上による財政安定が達成可能だという「希望という名の拷問」にしがみつく可能性が高そうに見えるため、そう述べるのである。

全国民を対象とする国民年金は、外国の公務員年金のような特殊職域の公的年金や、民間が運営する企業年金とはその属性が大きく異なる。例えるなら、周辺環境が急速に変化する場合にこうした変化に機敏に対応できる快艇よりも、政治的な制約などで迅速な対応が困難な航空母艦のような特性がある。航空母艦に例えられる国民年金は、予想外の障害物を避けるためにより多くの時間を要する。航空母艦の属性を持つ国民年金が、未来予測が不確実な資本市場の高い収益率に過度に依存する場合、収拾困難な事態が発生しないという保証はない。それにもかかわらず、基金運用収益率の向上が確定的な国民年金財政安定策の主要な手段の一つになり得るという主張が溢れており、非常に憂慮される。我々がシナリオとして設定した高い収益率を達成できなかった場合には、想像を絶する困難が訪れ得るからである。

現在、国民年金財政計算委員会や国会年金特別委員会では、第5次、すなわち今年3月の財政推計専門委員会が提示した基金収益率よりも、さらに収益率を高められるという主張が繰り返し提示されている。筆者は次のような理由により、こうした主張に同意することは難しい。何よりも、基金運用をうまく行ってきた外国の小規模国家または公務員年金などの特殊職域基金の過去の収益率データで、我々の国民年金の未来の収益率を予測しているからである。ここ数世紀の間、全世界が高度経済成長を遂げられた理由の一つは、地球環境破壊を通じた持続不可能な道を選択したからでもある。我々はこうした高度成長がもはや持続不可能であることを、最近になって顕著に現れている世界的な気候変動を通じて体験している。持続可能な成長のためには、地球環境を保護できる方向、すなわちこれまで行ってきた方式よりもコストがかかる方向への企業運営が不可避であり、これは直ちに企業の利益減少につながることになる。もはや過去のような高度成長は不可能だろうと展望する背景である。

中長期的な観点から、過去に比べて基金運用収益率が低下すると見る別の理由がある。高齢人口が増えるにつれ、世界的に運用する年金基金の規模も併せて拡大するためである。投資資金が増えれば、投資収益率が下落する可能性が高い。投資資金に対して高い収益率を提供する、投資対象となる資産が限定されていると考えるのが合理的判断であろうからである。外国の過去データに基づき、我々の国民年金が今後70年にわたって毎年今よりもさらに高い基金運用収益率を上げられるという楽観的な未来展望の「予測の誤り」が大きくなる可能性があると見る背景である。

状況がこうであるにもかかわらず、過去や現在よりも高い国民年金の未来の基金運用収益率を当然視している。我々の社会がもう少し慎重に、こうした主張の妥当性について多様な意見を聞くべき時であると思う。基金運用収益率の向上による国民年金財政安定の達成を、財政安定策ではなく、財政安定に寄与し得る想定可能なシナリオの一つとしてのみ参考にするべきだと判断する理由である。

いかなる年金基金よりも先んじて持続可能(ESG)な経営を行う企業中心に投資しているオランダ公務員・教職員年金(ABP、National Civil Pension Fund)、および世界最大規模の日本公的年金基金(GPIF、Government Pension Investment Fund)は、カナダ年金(CPP、Canada Pension Plan)、ノルウェー政府年金基金(GPFG、Government Pension Fund Global)、米国カリフォルニア州公務員年金(CalPERS)に比べて収益率が低い傾向にある。ABPは他の年金基金より先に「人権尊重(Respects for human rights)」に基づきESG成果が優れた企業に投資する哲学を採用している。特に気候変動、天然資源保存などが2050年まで主要なテーマであると判断し、関連分野に積極的に投資している。「すべての世代のために(For All Generations)」というモットーを掲げる日本公的年金基金もまた、2015年から超長期投資家として地球環境破壊のような「負の外部性を招いて得る短期的な収益追求」とは距離を置く投資戦略を採用している。オランダと日本の年金基金の収益率が相対的に低いのは、基金運用を誤ったからというよりは、持続可能な経営を行う企業中心の基金投資と、航空母艦のような属性を持つ全国民対象の公的年金の特性を考慮した投資によって現れる現象であると見ることができる。

輸出主導型、そして製造業中心の我々の経済が直面している国内外の現実を考慮すれば、中長期的な観点から過去よりも基金運用収益率を低く設定することが現実的に見える。地球環境破壊を招いた数世紀にわたる高速成長により、地球上の大多数が体験できるほどの環境変化、いや環境災厄を目の当たりにしているからである。世界的に広がっていく持続可能な方向への企業経営こそが、我々の国民年金の基金投資が選ぶべき道であるという側面から、我々に先んじる主要年金基金の投資形態を注意深く検討すべき時である。過去16年間にわたり財政安定措置を先延ばしにしてきたため、かなり苦痛を伴うであろう国民年金財政安定策を、それも至急に用意しなければならないにもかかわらず、基金運用収益率の向上による財政安定の達成が可能だという論拠によって、財政安定措置の切迫性と至急性が希釈される手段として悪用される可能性が高く見えるためである。

出典:韓国日報(原文を見る)

関連記事