福祉制度、屋台骨を厚くすべきである
[ソウル新聞・開かれた世界・2015年8月11日]
ユン・ソンミョン 韓国保健社会研究院 研究委員・高麗大学経済学科兼任教授
前回の総選挙と大統領選挙は、福祉論争が他のイシューを飲み込んだ選挙であった。大統領選挙直後には基礎年金の導入方式を巡って大きな混乱があった。基礎年金問題が一区切りついた後は、公務員年金改革問題で1年近く国中が騒がしかった。そうしている間に次の総選挙が近づいている。「福祉論争シーズン2」が近づいているのである。
ユン・ソンミョン 韓国保健社会研究院 研究委員
大多数の経済協力開発機構(OECD)加盟国の年金制度導入の歴史は、少なくとも60年以上である。制度が古いため、高齢者が最も裕福な世代だ。高成長時代の寛大な年金給付によるものでもある。最近「OECD大韓民国政策センター社会政策本部」が開催した国際会議で発表されたOECD最新報告書は、貧困問題が高齢者から若者へと移っていることを強調した。若者の貧困問題を解決することに国家の能力を集中すべきだというメッセージである。
我々の現実はどうであろうか。全国民を対象に国民年金が拡大された時点は1999年4月である。16年に過ぎないため、高齢者貧困が問題となっている。しかし、見過ごしてはならない事実がある。すべての高齢者が貧しいわけではないという点だ。貧困な高齢者は多いが、我々の歴史上で最も裕福な高齢者も少なくない。状況がこうであるにもかかわらず、我が国の高齢者がすべて貧しいかのように事実が歪められている。
我々の社会で日に日に深化する所得の二極化、最も困難な集団に集中した無償福祉の恩恵のせいで、中間に挟まれた中途半端な中下位所得階層が大きな困難を経験している。国家が少し助けてくれれば息をつける集団への福祉恩恵が多くない。福祉支出が急増しているにもかかわらず、国民の福祉体感度が低い理由でもある。
今こそ必要な人々へ適切に福祉恩恵が届くよう、我々の社会のインフラを再構築すべき時であると思う。本当に生活が困窮している高齢者がどれほどいるのか、所得二極化はどの程度深化しているのかについて、正確な統計を算出する時だ。所得不平等を示すジニ係数だけでも、政府公式統計と一部の専門家が主張する統計に相当な差がある。調査対象に含まれる富裕層と財産の範囲によるものである。
現実を適切に示すことができる統計作成を急がなければならない。昨年発行された国際通貨基金(IMF)報告書によれば、所得基準では我が国の所得不平等は日本より低いが、財産を含めると日本より高いことが現れている。高い高齢者貧困率も、不動産資産を考慮していないために現れる問題だ。年金などの金融資産が大部分である他のOECD加盟国とは異なり、不動産資産が大部分である我々の現実を考慮していないため、実際よりも高齢者貧困率が高く現れているのである。
国民が容易に納得できる統計資料が生産されてこそ、政府政策も弾みがつくのである。若者の問題を扱ったドラマが人気を集めている。就職が難しく、就職しても契約社員が大部分であるため、将来設計をすることができない。政府が多くの対策を出しても出生率が上がらない理由だ。前途が不透明なのに、どうして結婚して子供を産み、生きることを考えられようか。
高齢者貧困問題を疎かにしようという話ではない。全年齢層の中で誰が本当に貧困な集団であるのかを冷静に判断すべきだということだ。老後所得保障が重要だとして、いかに手厚い社会保障制度を作ったとしても、制度を支える若い世代、すなわち屋台骨が不十分になれば、その社会保障制度の先行きは暗いほかない。
近づく「福祉論争シーズン2」では、生産的な論争が行われることを期待したい。福祉、特に社会保障制度が提供できる最大の長所は、将来の不確実性に対する不安を軽減させることである。社会生活の中で失敗しても、国家が最低限の生活が可能になるよう支援してくれるという期待がなければならない。そうしてこそ、若い世代がやりたいことに恐れなく挑戦できる。この過程で創造性が発揮され、あわせて国家の生産性も高まるであろう。
これまで周辺環境が多く変化した。低成長が固定化し、ベビーブーム世代が本格的に労働市場から退出している。北欧の小規模福祉国家の全人口よりも多い数が、福祉受給者に変わっているのである。良かった春の日が早く過ぎ去ろうとしている。これ以上の消耗的な論争は、国家的な災厄でしかない。
出典:ソウル新聞(原文を見る)
